評判はいつだって的外れ‐なでしこ大儀見優季の真価‐
自分を表す言葉は…
2015年7月12日TBS「情熱大陸」。なでしこのエースストライカー大儀見優季(旧姓永里)さんは、取材班から辞書を手渡されていました。 「自分を表す単語を選んでください。」 彼女は、ニコニコとページをめくり、やがて一つの言葉を指しました。
「植物」。
植物は日の光や酸素や水や、様々な助けがないと生きていけないからと。自分は植物のように、まわりに支えられて生きていると。しかし「植物」、その言葉ほど、世間の印象からかけ離れた言葉もなかったのではないでしょうか。
孤高のエースストライカー。草食系というよりは肉食系。協調性とは対極に位置する人。 そんな風に見られていたような気がします。
しばしば信念は誤解を受け、積み上げた努力を見る者はいない
4年前、ワールドカップ優勝を果たしたなでしこ。チームのために汗をかく選手ばかりの中で、一人、異彩を放っていたストライカー、それが永里優季さんでした。前線からの守備を当然に要求するチームにあって、永里さんはあえてゴール前に貼りつき、常に得点機をうかがっていました。しかし結果は出ず、チームにはフィットせず、試合では交代を命じられ、ポジショニングの悪さを宮間あやさんに叱責される。この時、ガンバで懲罰交代を命じられた宇佐美さんが一斉に叩かれたように、「身勝手なストライカー」として、世間の目に正式に認知されてしまったように思います。
しかし彼女は、チームのために、そのやり方を選択していたのです。彼女の著書『大儀見の流技』(KANZEN)の中で、こう語っています。
自分なりに「世界で戦うため、チームを勝たせるためには、FWというのは点を取ることだけを考えてそれに専念すべきだ」という信念を持って臨んだワールドカップだった。開催地がドイツだったこともあり、自分のホームでもある国で、ストライカーとしての仕事をして、なでしこジャパンを勝たせたいという思いも強かった。チームを進化させるためには、周りと意見が違っていても、自分を貫くべきだと考えた。
彼女のそれまでの積み重ねや、チームを想う気持ちを、当時自分を含め応援していた日本人がどれほど理解できていたか。もし少しでも斟酌できていたら、あのような単純で、一方的なバッシングにはならなかった。そう思います。
私が「こうありたい」と思っていたストライカーとしてのやり方と、なでしこジャパンがFWに求める戦術は決してぴったりと合うものではなかった。 その結果、初戦でゴールをあげたものの、大会を通してその1点でとどまった。それは、「こうありたい」という考えに固執しすぎた結果でもあった。
強い意志と、出なかった結果に対する冷静な自己分析。外から見える印象に反して、常に客観視点を忘れない永里さんは、それゆえに非常に苦しみました。
ワールドカップが終わってからも、気持ちが晴れることはなかった。 サッカーをやめたい。代表ではもうプレーしたくない。 そんなことまで思ってしまっていた。 「失敗をした」「チームの戦術とは違う自分勝手なプレーをした」と周囲から思われているのではないか。
そんな葛藤をした永里さんが、なぜもう一度立ち上がれたのか。
失敗をしたまま終わりたくなという思いが、最後は勝った。 「変わりたい」「また、みんなとサッカーがしたい」 自分がいかにサッカーを愛し、なでしこジャパンとなでしこジャパンの仲間たちを大切に思っているか、改めて感じることになった。私のチャレンジを見守ってくれた、受け入れてくれた大切な仲間がいたから、今の自分がこうしている。
こんな真摯な気持ちも知らずに、当時世間がどれだけ叩いたか。そして、自分もどれだけ「あーあ、あかんやつやな」と思ったことか。彼女の1000分の1の努力もしていなかったにも関わらず。
だから、永里さんほどの努力をしてない自分が会社でどれだけ叩かれても、理解されなくても、そんなもんなんだ、と思うしかないですよね。 ただ、チームを大事に想い、前を向いていつか結果を出すこと、それだけが自分を救うんですよね。
結婚式の朝さえも
最後に余談ですが、永里さんは結婚して大儀見さんになった後も、自分を成長させるために常に努力しています。「あとでいいじゃん」と言われることが一番嫌いなんだそう。
結婚式の当日でさえ、やるべきことに手は抜きません。
多くの花嫁がそうであるように、私も結婚式の前夜まで準備に追われ、遅くまで起きていた。 翌朝は、9時にはウェディングドレスの着付けとヘアメイクの予約が入っていた。 そこから逆算すると、朝はとんでもなく忙しい。 でも、そんなときでも妥協はしたくなかった。 私は朝6時に起床して、7時には走りに出かけることにした。そこから30分、しっかり走って、朝ごはんを食べてから結婚式の準備に取りかかった。 結婚式の日だし、特別な日だし…とは思わなかった。 周りの人には笑われたが、それを当たり前のように受け入れてくれた夫には感謝したい。
夫とラブラブの大儀見さん、可愛いです。こんな旦那様やチームメイトやトレーナーや、いろんな人に支えられているから、「植物」という言葉を選んだんですね。知れば知るほど、大儀見さんは、世間のイメージとはだいぶ違うなあと思います。これからもどんどん進化して世間を驚かしてほしい。 私も、誰に理解されなくても目の前のやるべき事をやらなくてはいけません。
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